『涼宮ハルヒの憂鬱』

#12第12話 「ライブアライブ
もう、今回は山本さんの脚本だけで、充分おなかがいっぱいです(笑)。
小泉の語る「演奏と声のズレ」などといった、ハルヒの内面に関係のない部分については削除されており、脚本における原作からの変更もありました。
この話数は原作以上に、ハルヒの内面について言及されている印象。言及と言うよりもむしろ描写と言った方がいいですね。
私個人としては、今回は脚本だけで十二分に満足なんですが、それに輪をかけて演出がとても面白かった。
門脇聡氏と連名になっていた絵コンテですが、山本寛氏がコンテ切ったのはBパートでしょうね。あのENOZのライブでの細かいカット割のリズム感とラストのシークエンスでのキョンハルヒの叙情的な描き方と切り返しはかなりそれっぽい。
楽器の音とバンドの演奏の動き、歌とハルヒのクチパクがそれぞれぴったり符合していますし、ハルヒのアップショットの迫力も万点。ハルヒの横顔を映しているショットが手ぶれしていたのも臨場感に溢れる描写になっていて面白いです。それにしても、ライブシーンのタイムシートが見てみたいですねこれ(笑)。
そして密かに最初に歌った「God knows...」と次の「Lost my music」を歌うハルヒの表情が全然違うんですよね。「God knows...」の時はあのアップショットの迫力に表れているように表情から緊張感が出ていたんですが、MCをやって客の反応が分かった後の「Lost my music」では、ワンカットですが非常に楽しそうな表情で歌っています。
あと、ハルヒがライブを始めようとすると雨が降り出し、ラスト近くのキョンハルヒが木の下にいるロングショットのときに、ハルヒが湿っぽく語り出すと日差しが弱まります。さらに、「日陰」に寝そべっているハルヒは、ラストの俯瞰でキョンとともに「日向」へと出ていく。徹底して、ハルヒの心情は天候によって、描写、演出されています。
それと先ほど触れたあの木の下のロングショットは反則です(笑)。日差しで飛ばした背景が徐々に鮮明に映るところがなんともいえない情感を醸し出してます。


原作で一番好きな短編でしたので、山本さんが脚本・コンテ・演出に携わってくれてほんとよかった。
個人的には大満足の話数です。