『満月をさがして』

満月(フルムーン)をさがして(13) [DVD]

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「皆が私をを支えてくれてる

皆が私を輝かせてくれてる

私は歌いつづけるよ、一度欠けても又輝き出して、満ちていく月みたいに」



全話視聴終了。
名作。やっぱ名作。
はっきり言って、ツッコミ入れたい場面とか沢山有るし、作画も全話通してほとんどの回が悲しくなるほど低調。
でもやっぱ名作の誉れを得るに相応しい作品だと思う。
欠点を補って余りあるね、このストーリーは。
ちょっと風呂敷の畳み方が強引だった感は否めないけど(笑)。
大抵のツッコミどころは、ハチャメチャな設定に起因していることが多いんで、そこんとこはご愛嬌ということで気持ちよくスルーしていただければ。




<以下ネタバレ含む。視聴後に読まれることを管理人は望む(っていうか視聴してないと意味わかんないと思う(笑)>





第46話 「新月の夜に」
個人的にちょっと問題を感じた回。
タクトは自分が幽霊になっても構わないという覚悟をもって、自分の過去を満月に伝えることで、満月の「歌」=「生き甲斐」を取り戻そうとした。
それはよくわかるのだが、タクトは同じ場面で満月が余命幾ばくも無いという運命をも否定する。
人間なら誰しも、死にたくないと考えるのは、当然だと思う。しかし、過去にタクトは短い一生でも一所懸命にやりたい歌を歌うことが素晴らしい人生だと言っているし、実際に満月もそう思って行動してきている。だからこそ、死を賭しての情熱が人の心を打って、フルムーンという存在が人々に認知された。
だがタクトは唐突に満月の運命を否定したのだ。歌うことが満月にとっての生きる意味であるということは理解できるが、歌いつづけさせるために死なせないという論理には飛躍を感じざるを得ない。何故タクトが満月を死なせたくないと思ったのか、そこが明確に説明されないまま満月の死ぬ運命を否定したのではタクトの行動が不自然なものになる。特に俺はタクトに感情移入して見ていたので、甚だしい違和感を感じてしまった。
後の話数を見ることや自分で脳内補完することによって理解したが、タクトは「人間」として、「友達」として、「恋愛対象」として生じた、同情心から満月を死なせたくなかったのだ。
そう考えるならば、タクトの言う、短い一生でも一所懸命にやりたい歌を歌うことが素晴らしい人生だという主張は、まだ自分の過去を思い出していなかったことや職務遵守の気持ちなど「死神」としての立場からの言葉であって、「人間」としての感情から発したタクトの主張ではないということで、違和感なく理解できる。
だが、重要なターニングポイントである第46話で作品の根幹の部分をなしているテーマについてきちんと説明できていないのは失点だった。少なくとも俺は見ていて混乱した。


でも、これだけのハチャメチャ設定からジレンマだらけのストーリーを展開して、大風呂敷を畳んでいるわけだから、やっぱ名作だと思う。
粗は探せば幾らでも見つかると思うし、アニメーションとしての出来も決して誉められたものではない。
でもこれだけ心に残る作品はそうそう無い。完璧な作品だけが名作だとは限らない。
満月をさがして』は不完全さゆえの名作だと思う。ま、作画はどうにかして欲しいけど(←台無し(笑)


それにしても結局、代償無しで全てを手に入れられたんだよね、満月に関わったものはみんな。
それは満月の純粋性とか、そういう人間にとっての善の面みたいなものが成した奇跡ということで俺は片付けることにするけど、もうちょっと救いが無いエンディングでもよかったかなあと思ってしまうところが、俺の冷血漢たる所以でしょうか(笑)。
やっぱり泣けなかったし(笑)。