『涼宮ハルヒの消失』

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

読了。もー貪るように読みましたよ、今回は。
先ず一番最初に言わねばならないことは、「すいませんでした、谷川流先生」ってことです。
4月23日の『退屈』の感想で、私は原作に魅力を感じないとネボけた発言をしてしまいました。ほんとすいませんでした。
今まで、キョンに全然感情移入できなかったんですが、それはただ、キョンツンデレであるということに気づいていなかった、私自身の読解力のなさのせいです。ヤツはハルヒの巻き起こす非日常的な日常を素直に楽しいと言えないんですから。たかがそんな程度のことも分からないで、原作ラノベに魅力を感じないなんて、タワケたことを抜かして本当にすいませんでした谷川流先生。バカです俺は。
『消失』の読後感としては、正直、感動しました。「どこで感動するんだ?」という既読者のツッコミも聴こえないことはないですが、でも正直な感想として本当に感動したんですよ。涙出ましたもん(笑)。
今までは単なる傍観者で、巻き込まれているだけだという意識しかなかったキョンが、自らの意志で元の世界へ、ハルヒのいる、SOS団のいる「非日常的日常」へと回帰することを望む姿が愚直なまでに表現されていて、すごくよかったです。
少し真面目な話をすると、『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品には、相対主義的な世界観、つまり今の世界とは違う世界を望めば手に入れられるという設定があるわけです。でも、キョンはそうした相対的世界観を、ある種の理想的世界を否定して、自分が帰るべき世界を「絶対」的な価値とする信念によって、「現実」世界に帰ってくるんです。
私は4月18日の『憂鬱』の感想相対主義的な世界観は嫌いと無駄にゴネて、でも作者はそういう相対世界を否定していたんじゃないかと思って、続編を読む気になったと書いたんですが、『消失』はまさに私が望んでいた相対主義の否定を真正面から描いてくれていて、手前勝手に溜飲が下がりました。