『タッチ』(2005)

<青春は原色だ!!>
犬童一心
とはいえ、プログラムピクチャー&金曜ロードショーなので、その枷は踏まえて観た。
しかし如何せん前半のリズムがガタガタ。長澤まさみの靴下シーンがアップで画面に映った瞬間、「ああもうこりゃダメだな」という寂寞感が全身を襲う(笑)。所詮雇われ身分のやっつけ仕事か、と冒頭から意気阻喪。
どこのTVドラマだと思ってしまうリズムのない切り返しが目立つ。ただそうはいっても止めでは画が全くもたないというこの切なさ。どうにもこうにも煮え切らない。
それとこれは仕方ないとは思うのだが、脚本も時間的な制約のせいか原作の繊細なセリフ回しを排除して分かりやすさに特化。心の機微を繊細に魅せるあだち充的キャラを排除して物語の重心を意図的にズラすことで、『タッチ』という原作の呪縛から逃れんとするその心意気は(成否はともかく)よいのだが、決勝戦を前日に控えてるのに草野球やっちゃうところとか、達也の球をワンハンドで捕っちゃってる長澤まさみとか、他にも色々とあまりにも細部のリアリティがなさすぎるシーンが頻発しており、心底萎える。
それでも我慢して見続けていたら、和也が死んでからの達也の心境の変化と歩調を合わせるかのように漸く画面にテンポが。
今まで死んだふりをしていた長澤まさみも、球場に向かって走るシーンで遅まきながらも面目躍如。しかしやはり遅すぎる(笑)。
力の抜きどころと入れどころが様々な部分であべこべになってしまっているせいか、終始リズムにならない。
ということで犬童一心監督との「出会い」はなかなかホロ苦いものに(笑)。やっぱ観るなら『ジョゼ』なんだろうな。