映画

1ファンとしての『先輩』に関する一つの解釈

あまりにも素晴らしい映画なのでネタバレするのはもったいないから公開終了まで大人しくしていようと思ったんだけど、巷の評があんまりなので少々。 (↓以下ネタバレ) 張りぼての地球やむき出しのワイヤーが臆面もなく使われていること、早回し等特撮の技法…

『私の優しくない先輩』(2010)

分かりやすすぎるテーマと、それを描くために取った手法、ハマりすぎの配役に、スクリーンから溢れ出る山本寛監督の迸る才能!!! 正直まいった。随所にまいった。 モノローグが云々というやつにこの映画を語る資格はない。ここまで計算しつくされた映画で…

『ニュー・シネマ・パラダイス(完全版)』(1988)

−映画を愛すること− アルフレードは映画になった。 燃えさかるフィルムとともに、失明したアルフレードは、映画そのものになった。 永遠に「見る」ことの叶わない「見られる」存在となったアルフレード。 そして彼の発する言葉は、すべて映画によって形作ら…

『監督・ばんざい!』(2007)

体調悪くてダルかったけど遅ればせながら調子に乗って観てきた。 またしても昼間の回で客8人!! その上、上映後はみなさんロビーで大あくび! そら『座頭市』がトラウマにならあね。やっぱり「またかよ!!」という印象もあったけど、よーするにこれって北…

『大日本人』補足

どうにも書いた後にしっくりこなくてもやもやしてたので、卑怯を承知で付け足し。 私が映画の中で感じていた「照れ」とは、提示されるだけでちっとも追求されないさまざまなテーマが多すぎるところ。というか何一つ描こうとしていないし、ただそれがそこにあ…

『大日本人』(2007)

昼間の回に行ったら自分を含めて何と7人! 後ろのカポーの全くツボを得ない笑い声に少々辟易しつつ漸く観た。 面白いんだけど、もっと面白くできるんじゃないだろうかと他人事ながらに思わせる何とも言えない映画だった。奇を衒わずに普通に見せてくれれば…

『フラガール』

なんで開始5分でクソ映画だと思って見ていたのにぽろぽろと涙が出てくるんだろうか。まあ私はベタに弱いので理由は判然としてるんですが。 松雪泰子の大根芝居も泣かせるためだけの見え見えの構成や眠たい予定調和的展開も、もういい加減にしてくれと、幾度…

『UDON』

友人に「こんなのTVドラマじゃん。TVで見ればいいでしょ」と言われて、「ああやっぱりそう思うよね」とあっさりと引き下がった劇場公開当時。 訳あって今更ながら見る機会を得た。 基本的にこにたんのナレーションベースで物語が展開していくからか、うどん…

『ゲッタウェイ』(1973)

初ペキンパー。 冒頭の鋭利なカッティングの膨大な積み重ねには度肝を抜かれた。 彼の映画は暴力的だと称されているらしいが(よく知らんけど)、内容が暴力的というよりもむしろこのつなぎの暴力性の方が、遥かに「ペキンパー」なのだろうと思った(1本しか…

『二十歳の恋』(「アントワーヌとコレット」)(1962)

トリュフォーの描く恋は、いつも女ではなく映画に向けられているようにも見える。 女が映画であって、女を追うアントワーヌ・ドワネル(=トリュフォー)は女に逃げられるのと同時に、映画に逃げられる。女の数だけ映画があって、ドワネルは映画(女)を他の…

『あこがれ』(1957)

恥ずかしくなるくらいトリュフォー。さすが。 トリュフォーの眼差しが何に向いているのかが、たった17分の短編の中で如実に顕れる。 自転車をフォローで映し続けるキャメラの軽快さに、これからおとずれる躍動の息吹を感じる一方で、正面ショットによる古典…

『西遊記』(1960)

やはり目立つのは手塚治虫のアイディア。 女(ホントは悟空)の気を引こうと一張羅を着替えまくる八戒や京劇みたいな動きをする金角銀角、小竜の角がアンテナになって電話をしたり、ラストで牛魔王が闘牛になるシーンなど、突飛で面白い。 様々な場面で出て…

『少年猿飛佐助』(1959)

王道の冒険活劇。しかしベタであるが故に実に力強い。 更に、個性の際だったキャラクターたちが生き生きと躍動する。コミカルな動物たちの動きや、おけいちゃんに手玉に取られるばったの三次とおけらの金太のコンビのとぼけた描写もおかしい。主役級のキャラ…

『白蛇伝』(1958)

『白蛇伝』はやはり「つまらない」。 のんべんだらりと進行する予定調和的なメロドラマと分かりやすすぎる作劇上の起承転結は、今日的な「ドラマ」に狎れさせられている我々にとって退屈に感じる。古典を題材にしているというハンデを負っているとはいえ、画…

『戀戀風塵』(1987)

初侯孝賢。 尋常ならざるファーストショットから一気に引き込まれる。美しい。 ストイックに主観ショットを排し、被写体との距離を置く。電車主観を除けば、主観ショットは一度だけ。看病に来たアフンを「見つめる」アワンの主観ショットだけが擬似的な視線…

『TAKESHIS'』(2005)

こういう映画をグダグダ解釈するのは面倒なので一点だけ。 本作は、北野映画を殺す北野映画である。偏執狂的なファンの女が着ている服の赤・・・・・・『Dolls』踊る女形やタップダンスのリズム・・・・・・『座頭市』京野ことみの新体操を映す遠景ショット…

『座頭市』(2003)

な、納得いかねぇ……(笑)。 名だたる他の北野作品を差し置いて、何故にこの作品だけが突出して興行収入がいいんでしょうか? 「『座頭市』最高だったねー」とか宣う北野初心者には『ソナチネ』や『3-4x10月』も見なさいよ!! と言いたくなる。物語における…

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)

何故今の今までこの映画を観てこなかったのかが悔やまれると同時に、「今」初めて観たことによる時空を超えた映画的体験の邂逅という僥倖に、私は立ち会った。 後悔も幸運も、実のところ根は同じで、映画的体験が時空を超えること。つまり、「時をかける」こ…

『タッチ』(2005)

<青春は原色だ!!> 初犬童一心。 とはいえ、プログラムピクチャー&金曜ロードショーなので、その枷は踏まえて観た。 しかし如何せん前半のリズムがガタガタ。長澤まさみの靴下シーンがアップで画面に映った瞬間、「ああもうこりゃダメだな」という寂寞感…

『ギブリーズ episode2』(2002)

なるほど。百瀬義行氏は高畑勲の衣鉢を継いだ存在なのだなあ。 ただ、志向するものは同じなのだが、違う頂を目指しているような気がしなくもない。勿論、思想的な相違ではなく。 まあ、それはともかく、作品の感想をば。といっても一点だけ。 それというのも…

『X 劇場版』(1996)

勿論、呪術的な陣などを用いているせいもあるだろうが、冒頭から徹底的に強調され続けるシンメトリー。 波紋、水晶、鳥居、五芒星、正四面体や円柱や球などといった結界の形、十字架など、例を挙げればキリがない。あの異様に目鼻立ちが強調された人物の顔も…

『デジモンアドベンチャー』におけるうんこの弛緩と意義

完全に遅刻してきた者としては、もう既に語り尽くされている本作に対して付け加えることなど最早何もないような気がしないでもないのだが、それでも尚、興奮させずにおかない本作の魅力に触れてしまった者としては視聴した「証」として何事かを述べたくなる…

『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)

やっと見た!! 細田デジモン第2弾。 全くもって、呆れますなコレは。この計算ずくの画面構成には、最早心地よささえ感じる。 多層的に織りなされるサスペンスやギャグ、友情や闘い、更にはメロドラマなども加えて、わずか40分足らずの中に全て凝縮してそ…

『デジモンアドベンチャー』(1999)

やっと見た!! 細田デジモン第1弾。 FIXはやっぱ画面が締まりますね。最近キャメラ振り回す映画ばっかり見ていたもんだから、T.UやT.Bさえ抑制している本作は改めて新鮮に映る。 とかいいつつもっかい見てからちゃんとした感想を書きます。

『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(1993)

軽く度肝を抜かれました。これが岩井俊二か。 プールサイドで横になって片足だけプールに浸けている奥菜恵がエロすぎる。水面に反射する陽光と物憂げに横たわる奥菜恵の脚部が織りなすフェティシズムを超えた美しさが、文字通りの瑞々しさで迫る。胸元のアリ…

『風の谷のナウシカ』(1984)

ただ、涙だけが零れる。 一般的に、愛では「地球」(=人間)を救えない。 しかし、ナウシカの愛は様々に蹂躙されながらも、風の谷を救い、その愛ゆえに命を救われる。 本作のシナリオは、人間同士の争い、力を求める業、人と自然の共生などといったものにつ…

『勝手にしやがれ』(1959)

ヌーヴェル・ヴァーグらしい軽快なキャメラの移動撮影による長回しとそれと比するかのように散見されるゴダール特有のジャンプカット、そして画面に映えるジーン・セバーグの瑞々しさとジャン=ポール・ベルモンド(=ゴダール)の絶望的な孤独!! 改めて思…

『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)

原作未読。っていうか読んでたまるか。 素人の私にさえ手に取るように次に吐くセリフが分かってしまう何とも言えない物語などには最初から期待などしておらず、行定勲3本目(正確には4本目だが『GO』は記憶にないのでノーカウント)の映画に、ただ瞳を凝らす…

『花とアリス』(2004)

初岩井俊二。 面白いんだけど長すぎる!! 序盤は切り返しなども含めてカット数が比較的多く、ズバズバとしたカット割りで素晴らしくテンポの良いリズムで進んでいったものの、ストーリー的にも後半は伏線を回収したりしているためにじっとりとした画造りに…

『メトロポリス』(2001)

鉄は熱いうちに打てということで。初りんたろう。 見ていてゾクゾクした。こんな感覚は初めて。 私なりの印象を一言で言えば、「過剰を蕩尽する作家」、それがりんたろう監督。 過剰なまでに描き込まれている「メトロポリス」という世界は蕩尽されるために存…