『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968)

先日近所のレンタルビデオ屋にてハケーン。漸く観た。
すごい、すごすぎる。
冒頭からラストまで圧倒されっぱなし。
圧倒的な作画枚数による東映フルアニメでアクションシーンを描いたかと思えば、FIXの止め画だけを繋いで戦闘シーンを演出したり、更に一枚の大きな止め画をパンして魅せたりと、数え上げればきりがないほどけれん味たっぷりの高畑演出。
そして単純ながらも重厚に描かれる相容れないホルスとヒルダの関係。「何も生み出せない」が故に「死なない」というヒルダの象徴的な意味内容はともかく、「悪」であるが故にただ「美しい」ヒルダの存在感!
何度も言うが、高畑勲の天才を「共産主義的だ!」という一言で封殺するのは人非人である。
躍動する作画、天才的な演出、そして王道で骨太の物語。
何故我々は『ホルス』というアニメを天から授かりながら、今なお新たなアニメーションに現を抜かすという愚を犯し続けているのだろうか?
否、『ホルス』という「永遠」のアニメーションが、我々に終わりなき夢を見せ続けているのだ。それゆえ「永遠」に生き続けたいと願ったために業を背負わねばならなかったヒルダのように、我々も「『ホルス』という過去をもつ」という業を克服せねばならないのだ。
しかし我々は、30余年の時を経て、メルクマールとなった『ホルス』を超えるファンタジーを産み出せたのだろうか? 答えは明らかだ。
我々は「永遠」に乗り越えることの出来ない頂を前にして、歓喜とともに絶望に打ち拉がれねばならない。
昇ることなく沈んでいく、「太陽の王子」の最期を見届けねばならないのだから。


(追記)
関連書によると、止め絵は現場の事情が生んだ不本意の産物だったとのこと。bonoさんご指摘ありがとうございます。
てか今見直してみたらFIXだけじゃなかった(笑)。